はじめに
「最初はやる気にあふれていたのに、だんだん練習しなくなってしまって…」
ピアノ講師をしていると、こうした保護者の声をよく耳にします。
そして、ピアノを辞めさせてしまう保護者の大半が「練習をしないから」といった理由で辞めさせてしまいます。
「練習を嫌がるから」辞めさせるのであればいいですが、「練習をしないから」とピアノを辞めさせるのには私は反対しています。
それは、子供の中に「練習できなかった体験」「続かなかった体験」として一生残り続けるからです。
私にも幼少期にピアノを習っていた友人は多いですが、「練習しなくて辞めさせられたけど続けておけばよかった…」と後悔している友人も少なくありません。
ピアノを始めたばかりの頃は、「楽しい!」「弾けるようになりたい!」という気持ちが子ども自身の原動力になります。ですが、少し難しい曲や練習に直面した時、また少し慣れが出てきて飽きてしまった時、多くの子がやる気の壁にぶつかります。
これは特別なことではなく、誰にでも起こる自然なこと。大人でも「今日はなんとなく気分が乗らない」という日がありますよね。子どもも同じです。ただ、子どもはまだ「やる気がない日」と「でもやった方がいい日」を区別して、自分でモチベーションを調整することが難しいだけなのです。
ピアノの上達には、毎日の練習が基本です。1日15分でも、数分でも構いません。大切なのは「今日もピアノに向かった」という小さな積み重ねです。
とはいえ、「毎日やりなさい!」と繰り返すだけでは、逆に子どもがピアノを嫌いになってしまうことも。
では、楽しく習慣化するためにはどうしたらよいのでしょうか?
方法①:「練習シールカレンダー」を使って「見える化」
子どもは「見えるもの」があるとやる気を出しやすい生き物です。
そこでおすすめなのが、練習する日を決めて、練習したらシールを貼っていくカレンダー。
楽譜に「月・火・水・木・金・土・日」と曜日を書いておき、練習したら好きなシールを1枚貼るだけ。
ただそれだけのことですが、「今日もできた!」という達成感と視覚的なご褒美が、やる気を支えてくれます。

それでもやらない場合は、週4日など練習する日を子供に決めさせて、その曜日を書いてあげること。
大事なのは子供に決めさせることです。親が決めると子供は受け身になりますが、子供が自分で決めると「自分との約束」になります。
「この日とこの日、ちゃんとやったね!」
「今週は5日も練習できたね!」
など、できたことを褒めてあげることも大切です。
方法②:「練習のきっかけ」をつくる
子どもが自発的にピアノの前に向かうためには、「きっかけ」が必要です。
やる気や根性で毎日頑張らせるよりも、思わずやってしまう流れをつくることのほうが、実はずっと効果的。
ここでは、そんな「練習のきっかけ」を生むための工夫をご紹介します。
ピアノのフタを開けておく
「ピアノが閉じたまま」だと、それだけで“今日はやらなくていいかな…”という雰囲気になってしまいます。
逆に、フタが開いているだけで、「ちょっと弾いてみようかな?」という気持ちになりやすいのです。

できれば、朝のうちに保護者の方がフタを開けておく、椅子を出しておく、楽譜を開いておくなどして、「すぐ弾ける」状態をつくっておくとよりよいでしょう。
練習の前に「お気に入りの1曲」を取り入れる。
難しい練習からいきなり入ると、気が重くなるのは大人でも同じ。
まずは「好きな曲のワンフレーズ」「昔弾いた曲の中で気に入っている曲」など、やりやすいものからスタートしてみましょう。
「とりあえずちょっとだけやってみる」
これが、毎日の習慣づくりの第一歩になります。
「録音」や「ごほうびタイム」で楽しみを用意する
子どもは、自分の成長が「目で見える・耳で聞こえる」と、達成感を感じやすくなります。
・スマホで録音して「今日の演奏」を一緒に聴き、具体的な言葉で褒める。
・1週間続いたらご褒美の大きいシールをプレゼント。
など、練習して良かったという成功体験を積ませてあげましょう。
習慣化の力が未来をつくる
こうした「きっかけづくり」を通じて、練習がだんだん「当たり前」になっていきます。
最初のうちは大人のサポートが必要ですが、「ピアノは毎日少しでもやるもの」という感覚が身につくと、やがて勉強や他の習いごとにも応用できる力となります。
ピアノは小さいころからやる子が多い分、習慣化の力をピアノで身に着けられるとそれだけでこれからを生きていく武器になります。
ピアノを通して「やる気がない日でも、やる方法がある」ということを学べたら、それだけでも大きな成長です。
まとめ:ピアノは楽しく続けることがいちばん大事
子どもの練習が続かなくなるのは、「やる気がないから」ではなく、「やる気の出し方がわからないから」です。
まずは、毎日ピアノに向かうことからはじめてみましょう。
うまく弾けるようになれば、やる気はおのずとついてきます。
この繰り返しが、ピアノの練習のリズムを子どもに教えてくれます。
そして何より大切なのは、「今日もできたね」「がんばってるね」と声をかけること。
ピアノに限らず、子どもは認められることで自分から動けるようになります。
おうちでの練習を、ちょっと楽しく、ちょっと気軽に。
そんな日々の工夫が、「弾けた!」の笑顔につながっていきます。
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